ケープタウンでの家族愛

サッカーのワールドカップ(2010年)はスペインの優勝により幕を閉じたことは記憶に新しい。同大会は南アフリカ共和国での開催だったが、同国のケープタウンには、私の船乗り時代、ほのぼのとしたあたたかい「家族愛」の思い出がある。

当時、我々は船で荷物を世界中に運搬していた。ケープタウンで荷役中のことである。
人種差別のひどい国で、当時(昭和40年代前半)は特にひどく、午後3時になると少数人種の白人が黒人部落に向けて大砲の空砲を発射して威嚇していた。最初は驚いたが「なるほど、歯向かうと大砲を撃つ、と脅すのだな…」と知った。

黒人は家族のため、船の内外で一生懸命働いていた。しかし日本人と違い、時間になると(特に昼)、たとえ荷役中であろうが、荷物が宙吊りであろうが、仕事を終えていた。もう数分か続ければ仕事が一段落するのに…。
そして多くの黒人は港の岸壁で、家族や恋人たちと共に楽しく食事の時間に入っていた。決して高価なものではないが、バスケットの中から手作りの食事を楽しんでいたのを思い出す。

このような「忘れかけていたもの」を思い出すと心がほのぼのとする。我々の家づくりの理想の姿である。家族の憩いの場である家造りは、「健康」「安全」「安心」が最優先である。
あの時の家族や恋人たちは今はどうしているだろうか…。幸せであってほしい。