ワサビのきいた寿司を食べて、ふと昔のことを思い出した。
私がまだ船乗りだった頃、第5幡州丸という4000トン弱の船でマグロの操業に大西洋のカナリア諸島のラスパルマスという港を中心として行動していた頃の話である。連日、自分の腕を自慢してマグロのトロで寿司を握っていた。
この頃、高知県の土佐清水市の田川という操機手がおられ、ある日、私のにぎる寿司にケチをつけた。
曰く、「東光のにぎる鮨は旨いが、ワサビが少ない!」と。
私は負けずぎらいの性分なので、親指大ほどのワサビを入れた寿司を握って食べさせた。
これを口に入れた田川さん、口の中でワサビがきいて何を言わず1分位経っただろうか…。
涙をポロポロ出しながら、「うーーん。うまい!」と負けん気を出しながらほめてくれた。
同じく負けず嫌いであるこの男のせめてもの抵抗であった。
田川さん、あの時は大変失礼しました。
いろいろと教えてもらっていたのに…。
酒と話の好きないい先輩であった。
お元気ですか?もうかれこれ80才位になっておられることでしょう。