そういえば、船乗り時代にKという面白い男がいた。
彼は長崎県の五島列島にある宇久島の出身。自分より確か2歳年上だったと思うので、今はもう70歳に近いはずだが…。ちょうど10年位前に、私の話を聞きつけて電話してきた。当時は私と2人でよくつるんでおり、今思えば若い頃の2人の武勇伝は、すごいものがあると思う。
当時の上司からは「仕事をさせれば2人で半人前、しかし陸にあがると10人前の悪さをする」などとよく言われたものである。(今はまったく違っている?)この男は馬鹿げた話が得意なのだが、馬鹿ばかしさも度を越えると気持ちがいいくらいの馬鹿な話をするのである。
Kの話の中でも、とりわけしょうもなく馬鹿げている話をひとつ…。
それはKが子どもの頃、海に泳ぎに行った時の話。なんと海底に1mくらいの大きな穴がポッカリとあいていたという。その5メートルぐらい離れたところにも、もう1つ穴があいており、水が吹き出ていたというのだ。
何かと思って目をこらしてよく見たら…
それは、カレイの鼻だった…と。
馬鹿げている…。
とすると、このカレイ500m~600m位の大きさのはずだ。本当に馬鹿げている…。
皆に馬鹿にされていたが、本人はいたって本気だった。
こんな楽しい船内生活も遠い昔の思い出だ…。
本人今頃、何をしているかな…。