ケープタウンでの家族愛

サッカーのワールドカップ(2010年)はスペインの優勝により幕を閉じたことは記憶に新しい。同大会は南アフリカ共和国での開催だったが、同国のケープタウンには、私の船乗り時代、ほのぼのとしたあたたかい「家族愛」の思い出がある。

当時、我々は船で荷物を世界中に運搬していた。ケープタウンで荷役中のことである。
人種差別のひどい国で、当時(昭和40年代前半)は特にひどく、午後3時になると少数人種の白人が黒人部落に向けて大砲の空砲を発射して威嚇していた。最初は驚いたが「なるほど、歯向かうと大砲を撃つ、と脅すのだな…」と知った。

黒人は家族のため、船の内外で一生懸命働いていた。しかし日本人と違い、時間になると(特に昼)、たとえ荷役中であろうが、荷物が宙吊りであろうが、仕事を終えていた。もう数分か続ければ仕事が一段落するのに…。
そして多くの黒人は港の岸壁で、家族や恋人たちと共に楽しく食事の時間に入っていた。決して高価なものではないが、バスケットの中から手作りの食事を楽しんでいたのを思い出す。

このような「忘れかけていたもの」を思い出すと心がほのぼのとする。我々の家づくりの理想の姿である。家族の憩いの場である家造りは、「健康」「安全」「安心」が最優先である。
あの時の家族や恋人たちは今はどうしているだろうか…。幸せであってほしい。

バックファイヤー

先日の新聞でベニグノ・アキノ氏がフィリピン大統領に就任したとの記事を目にした。
フィリピンといえば、私の船乗り時代の次の話を思い出す。

フィリピン沖で当直中のこと。ボイラーを点火する際にバックファイヤーを顔一面に受け火傷を負ってしまった。頭の毛はちりちりに、まゆげはほぼ無くなっていた。ちょうど長い航海を終えて、ケープタウンより横浜に入港する前だったのに、夢は一瞬でパーになった。

夢というのは、男たるものいろいろあるものだが、飲みにもいけず、何かいい方法はないかと思い悩み、考えに考えた結果、「そうだ、まゆげを書けば良いではないか」と、単純で馬鹿げた発想に落ち着いた。鏡を前に太い油性のマジックインキでまゆげを書いた。

結果は、一発勝負だったので右と左のまゆげで段違いになってしまった…。

段違いまゆげ

油性だったのでやはり消すことができなかったが、飲み屋は暗いのであまり分からないだろうと思い、当時キャバレーに彼女がいたのですぐさま会いにいった。
ボックスに座って待っていると彼女とその友達がやってきた。バレないようにと、まゆげに段がついた分、顔をゆがめてバランスを取って頑張っていたがついにバレて大笑いされてしまった。

あの時はそこまでしてでも飲みに行きたかったんだなぁと、当時の自分のアクティブさと馬鹿さ加減に少しおかしくなった。

海から見る広大な光のバリアー

港にて船乗りが入港する時の気分は、子供の頃の「遠足の前日」の時のそれに近いものがある。

「陸にあがったらまず何をしようか…」
「女房は元気でいるだろうか…」
「子どもは成長しているだろうか…」

…等々、いろいろ考えたものだ。
そんな入港の夜はデッキ(甲板)に出て、入港の方向を眺めている時に決まって見る光景があった。

 

 

(写真=船乗り時代・港にて…写真右が長男(現社長)、左が長女)

それは、水平線上に浮かぶ広大な光のバリアーである。

近づくにつれてそれが都市の熱気か、巨大なドームの様に空中を覆っていた。この熱気がヒートアイランドを形成しており「この熱を冬場の都市に還元できたらいいのに…」と当時は漠然と考えていたものだ。若気のいたりで入港後の楽しみが先となり忘れていたが、これがジオパワーシステムの原点になろうとは…。すなわち冬場の発生熱をもう一度室内にリターンしてエネルギーを有効利用し省エネにつなぐという考え方である。

発想と行動はつねに必要なものであるとつくづく思う。年を重ねてもいつまでも若者の心でいたいものである。

船乗り時代の面白い男

そういえば、船乗り時代にKという面白い男がいた。

彼は長崎県の五島列島にある宇久島の出身。自分より確か2歳年上だったと思うので、今はもう70歳に近いはずだが…。ちょうど10年位前に、私の話を聞きつけて電話してきた。当時は私と2人でよくつるんでおり、今思えば若い頃の2人の武勇伝は、すごいものがあると思う。
当時の上司からは「仕事をさせれば2人で半人前、しかし陸にあがると10人前の悪さをする」などとよく言われたものである。(今はまったく違っている?)この男は馬鹿げた話が得意なのだが、馬鹿ばかしさも度を越えると気持ちがいいくらいの馬鹿な話をするのである。

Kの話の中でも、とりわけしょうもなく馬鹿げている話をひとつ…。
それはKが子どもの頃、海に泳ぎに行った時の話。なんと海底に1mくらいの大きな穴がポッカリとあいていたという。その5メートルぐらい離れたところにも、もう1つ穴があいており、水が吹き出ていたというのだ。
何かと思って目をこらしてよく見たら…
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